病院等の医療機関も相続税対策が必要

相続14

医療法人は「社団医療法人」と「財団医療法人」に分けられ、医療法人のほとんとが社団医療法人であり、財団医療法人はごく少数になっています。さらに社団医療法人は、「出資持分のある社団医療法人」と「出資持分のない社団医療法人」があります。

出資持分のある社団医療法人とは、定款に出資持分に関する定めが書いてあり、出資分が相続の対象になります。

平成19年4月1日以降に新たに設立した医療法人は出資持分がなくなった

平成19年4月1日に医療法改正が行われ、平成19年4月1日以降に新たに設立した医療法人は、出資持分がなくなりました。それまでに設立している医療法人には、持分が認められています。つまり、平成19年3月31日までに設立している医療法人は、持分のある医療法人ということになります。

平成19年4月1日以降は、出資持分のある医療機関とない医療機関が混在しているわけです。現在、社団医療法人の大半は出資持分のある医療法人です。

出資持分とは何か

出資持分とは何のことを言うのでしょうか。

たとえばAという医師が平成19年3月31日までに1,000万円を元手に医療機関を設立し、2億円の財産を築いた後、その医療法人を解散した場合、築いた2億円の財産はA医師のものとなります。

一方、同じようにB医師が1,000万円を元手に医療機関を設立し、2億円の財産を築いた後、その医療法人を解散した場合を考えてみます。

もしB医師が設立したのが平成19年4月1日以降であれば、築いた2億円の財産はB医師のものにはならず、国のものになってしまうのです。

つまり、医療法人を解散したときに、出資持分のある医療法人は出資者に財産が戻ってきますが、出資持分なしの医療法人の場合は、出資者には財産が戻ってこず、その財産は国に取られてしまいます。では、つぎの例です。

平成19年3月31日以前にA医師とB医師が1,000万円ずつ出し合い医療法人を作って、4億円の財産を築いたとします。

その後にB医師がその医療法人を辞めることになった場合、B医師は半分の2億円をもらう権利があります。しかし、平成19年4月1日以降にその医療法人を設立したのであれば、B医師は何ももらうことができません。出資していても、医療法人の財産をもらえないのです。

これは財産権の問題であり、出資持分のない医療機関の場合は財産権がないということになります。

出資持分を相続した人には相続税が課税される

相続19

出資持分がある場合は、医療法人に出資している人が医療法人を辞めれば出資分が払い戻されますし、医療法人が解散した場合には財産が分配されます。出資持分は財産であると認められるため、出資持分を相続した人には相続税が課税されます。

また医療機関を設立した人が、自分の子供に病院を相続させる場合も、相続人である子供は相続税を払わなければなりません。もし相続税が莫大な金額になって支払えない場合、医療法人に出資持分の払い戻しを求めることになります。

しかし、医療法人の資産の大部分は現金ではありません。病院の土地や建物、医療機器などが資産のほとんどであるため、それだけの現金を持っておらず、出資持分の払い戻しをすることができません。すると、出資持分の払い戻しの資金を調達するためには、銀行などから借り入れをしたり、資産を売却したりしなければなりません。

これでは病院経営が悪化してしまう恐れがあります。

出資者全員が出資持分を放棄すれば、医療法人に贈与税が課税される

このように出資持分のある医療機関は、相続税のために経営が悪化するという問題が多くなったため、国は平成19年4月1日に医療法改正を行いました。国は「出資持分のない医療法人」への移行を増加させることを目的としているため、出資持分のある医療法人は出資持分のない医療法人に移行することができるようになりました。

逆に、出資持分のない医療法人から出資持分のある医療法人への移行はできません。移行の手続き自体は比較的簡単で、定款を変更し、新しい定款を自治体に提出すればよいのです。しかし現実には、出資持分のない医療法人に移行することは簡単ではありません。

その理由の一つ目は、出資者の全員が出資持分を放棄しなければならないことです。もし出資持分の放棄に反対する出資者がいたら、その出資者の持分を医療法人が払い戻すことになります。もう一つの理由は、出資者全員が出資持分を放棄すれば、医療法人そのものに贈与税が課税されることです。

もし出資持分の評価額が10億円であれば、医療法人に課せられる贈与税は約5億4,500万円という莫大な金額になってしまいます。

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条件を満たせば贈与税が非課税になる

このようなことから、出資持分のある医療法人は税金対策を考えなければなりません。方法としては、一つ目は医療法人の評価額を引き下げること、二つ目は出資持分のない医療法人へ移行することです。医療法人の評価の引き下げ方法としては、役員への退職金を増やして支給し利益を減らす方法、MS法人を設立して、配偶者や子に対し財産を分散する方法、配偶者や子が生命保険に加入する方法、不動産を購入する方法などがあります。

一方、出資持分なしの医療法人に移行するとき、ある条件を満たせば贈与税が非課税になります。その条件は三つあり、一つ目は、医療法人の理事を6名以上にすること、監事を2名以上にすること、二つ目は医療法人の役員の3分の1以上が親族であってはならないこと、三つ目は、法人関係者に利益を供与しないことです。

この条件のなかで、特に二つ目の「医療法人の役員の3分の1以上が親族であってはならない」というものはとても厳しいものです。役員のほとんどを親族にしている医療機関が多いのです。親族ではない赤の他人を役員に入れることは、病院乗っ取りなどの危険な面があると危惧する場合が多く、出資持分なしの医療法人への移行がなかなか進まないのが現状です。

そこで国は、平成29年10月に条件を緩和し、二つ目の「医療法人の役員の3分の1以上が親族であってはならない」という条件をなくしました。これ以外の二つの条件を満たすことができれば贈与税を非課税にできるのですから、大きな緩和策と言えます。

相続税に詳しい税理士に相談することが大切

医療機関の税金対策は、顧問税理士等に依頼しているでしょうが、すべての税理士が医療機関の相続税に詳しいとは限りません。一度、顧問税理士に確かめるとともに、もし医療機関の相続税対策に不安を持っているなら、相続税に詳しい税理士に相談することが大切です。